野草の春じたく|野草の管理人より

野草の春じたく|野草の管理人より

真下はるさんは、小生活 KONAMAIKIの野草を見守る管理人です。山に入り、季節の移ろいや草木の表情をたしかめながら、手摘みで採取し、一つひとつを丁寧に選別しています。

この連載では、製品の背景にある里山の気配や、自然と向き合う日々のまなざしを、真下さん自身の言葉でお届けします。

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つい最近まで積もっていた雪はすっかり姿を消し、分厚い上着もクローゼットで静かに次の出番が来るまで休んでいる。

今か今かと待ちわびていた鶯の声が聞こえ始め、茶色く枯れた草の隙間から新緑が顔をのぞかせる。
寒さで縮こまっていた体からふっと力が抜けて、やわらかな脱力に包まれる。

—あぁ、春が来たのだと、ようやく体の奥から実感する。

その最中にいると、永遠に続くように感じられる季節も、振り返ればあっという間に移り変わっていく。

土が顔をのぞかせたかと思えば、ほどなくして蕗の薹(フキノトウ)がひょっこりと姿を現す。
その小さく愛らしい姿に歓喜するのも束の間、蕗の薹として美味しく味わえる時間はほんのわずかだ。
丸まった蕾は少し目を離した隙に「それいくぞ!」とばかりに開き、いつの間にか立派な蕗へと姿を変えていく。
そうしてあらゆる植物のスイッチが入り、みるみる間に里山は緑に包まれていく。

 

小生活では、蕗の野草茶も店舗で楽しめるようになっている。
そのため野草の管理人である私は、「お、今年も生えてくれたんだね」と、見つけるたびに嬉しくなる。
また今年も、春が巡ってきたのだと。

——地域に根づく素材を、自然に感謝して少しばかり頂戴する。

——自生地の回復力を最優先に、採り過ぎない・根を残す・季節を待つことを徹底。

小生活では、これらのことを大切にしている。
そこにあるものを欲に任せて取り過ぎることなく、季節を焦らずに待つ。
そうするとまた、自然はやさしく私たちに恵みを与えてくれる。
そのたびに、そっと「頂きます」と声をかけ、少しばかり分けてもらう。

植物はいつも語りかけてくれている。
全身で季節を、限りがあるからこその喜びを教えてくれる。
ただそこに在るだけで、美しい姿を見せてくれる。
その在り方に心を打たれながら、今日も野草を探す。
そしてまた出会えたとき、静かに幸せを感じるのだ。

あなたはどんな時に春の訪れを感じるだろうか。

【著者】ましもはる
シンガーソングライター&鶏と畑のある暮らし
大阪生まれ、島根県大田市在住。 大阪で音楽活動を続ける中、心身の不調をきっかけに食生活を見直し、食の大切さを実感。安心できる食べ物を自分の手で作りたいという思いから、島根への移住を決意する。 現在は山の中で鶏や猫と暮らしながら、不耕起栽培やパーマカルチャーを学び、野草を日々の暮らしに取り入れている。音楽活動を続けつつ、卵やマコモダケの販売、季節ごとの仕事を通して、自然の循環に寄り添った暮らしを実践している。